「ルポ新大久保」を読む(ネタバレあり)
室橋裕和著「ルポ新大久保 移民最前線都市を歩く」(辰巳出版株式会社 2020年9月15日初版)についてのあれこれ。
本書を未読の方は、ぜひ購読されてから、この駄文をお読みください!
死紺亭は長年高田馬場に住みましたが、いまは北新宿(最寄りは大久保駅)に住んでいます。1年ちょっとかな。そんな「よそもの」の視座で読みました。
ムロハシさんは新大久保に引っ越して、その体感をルポします。
ムロハシさんは、「コリアンタウン」はそう広い範囲ではない、と書きます。これは得心。昔は280円だったろう「ニハマル弁当」(現在290円)を発見します。
「ベトナム・アオザイ」というお店の店長から、ガールズ・バーをやりたいという夢をきいたりします。
「新大久保から高田馬場にかけての一帯に、日本語学校や、外国人を受け入れる専門学校が密集する。」と。これは、ぼくの体感でもそうです。そういう磁場がある。
皆中稲荷神社の小さなお祭りに触れます。この神社はよく眼にしますが、死紺亭はこの祭りを知らない。
戸山公園にある高台の「箱根山」の記述が。早稲田大学の演劇サークルに劇団森(シンと読む)という団体があり、彼らは新入生歓迎の時期、そこで花見酒の宴をひらくのでした。
新大久保にあるハラルの食材などがある通りを「イスラム横丁」と呼ぶらしいのですが、その名付け親はタモリさんという説があるそうです。「ブラタモリ」の新大久保の回での話だそうです。その回、死紺亭、見てました。まだ「笑っていいとも」やってたんだよな。
「新宿八百屋」という外国人がお客さんのお店も登場。詳しくは本書に当たってください。
タピオカ屋が乱立する様子もムロハシさんはルポします。日本でベトナム人向けのフリーペーパーを手がける韓国人という気になる存在もルポ。
日本福音ルーテル東京教会の礼拝のテーマがポエトリーしてる。「キリスト打率一割」とか。面白いのが本書では紹介されます。
ムロハシさんが非常に気になるという「和風ヘルス寺子屋」。そこ、知ってます! かれんちゃんという娘がいいんです
ちなみにここの近所にあるベトナム居酒屋で、死紺亭の引越し祝いをURAOCB夫妻・大島健夫夫妻が催してくれたのでした
あるガイジンが発する「ここはニンゲンセカイだから、仕方がない」という諦念。ニンゲンセカイという表現が心に残ります。
宗教、海外送金、行政書士、など外国人に関するマターが語られます。
在日韓国人のオールドカマーとニューカマー。この表現で見えてくる問題系があります。
大久保図書館や大久保小学校などの外国人を支えるインフラも重要です。
そして、2021年1月24日に高田馬場ときわ座で開かれた森田智子ソロライブのスペシャルゲストであった関根のおばちゃんも、本書の重要な登場人物です。過激派の発行物を請け負い、ウーマンリブや「ピースボート」創設に関わったことはライブでも語られました。森田智子さんの肩書き「言霊表現者」もおばちゃんの手によるものです。おばちゃんは新大久保アクティビストですね。
島崎藤村、国木田独歩、幸徳秋水、孫文など大久保(百人町)ゆかりの人物たちも登場。
日本人のパワハラ気質にも気づかされます。外国人の眼を通して。
コロナ禍でゴーストタウンと化したコリアン・タウン。リアルな現状が描かれます。
新大久保は、ひょっとしたら、東京の一番東京的な街かも知れない。「死紺亭の東京っていい街だな」の作者は、この良著に触れて、そう感慨を新たにするのでした。
以上、過渡期ナイトPD事業部・死紺亭柳竹でした